瓜生原 葉子

担当科目 組織行動論、経営組織論

研究テーマ:ソーシャルイノベーションと行動変容

 社会には様々な課題が存在します。その課題を解決し,持続可能なより良い社会にしようと取り組む新しい考えや方法が「ソーシャルイノベーション」です。それを生みだすためには,企業,非営利組織,行政,大学などの多様な立場の人々が協力し合い,役割や関係性を変化させ,持続的に人々のニーズを満たす新たな価値やビジネスモデルを共に創造することが必要です。
 そのため,大きく二つの視座から研究しています。一つ目は行動変容,ソーシャルマーケティングです。具体的な社会課題として,「臓器提供の意思表示率が低い」ことに着目し,人々の意思表示行動を促進しています。その理由は,グローバル製薬企業で,20年にわたり臓器移植分野の研究開発・マーケティングに従事する中,日本では,移植医療に対する理解不足や偏見から,意思表示率が低く,個々の意思と権利が尊重されていないことを実感し続けてきたからです。
 それを解決するため,例えば,移植や意思表示に関心がない人,関心をもってYES/NOの意思決定はしたものの意思表示するきっかけがない人に同じメッセージを伝えても心に響きません。異なるアプローチが必要です。前者には,移植医療の意義を伝えたり,誤解を解いたり,共感を得る施策などが有効です。後者には,行動の障壁になっている不安を払拭し,意思表示をする時間・媒体を提供することが有効です。また,意思表示に新しい価値を与えて,人々の認識を変えることも重要です。ゼミ学生とShare Your Value Projectをたちあげ,『意思表示は家族へのメッセージ』という新たな価値を人々に認知していただく「MUSUBU2016キャンペーン」というアクションリサーチを行いました。これにより,関心がない人を31.9%から8.5%に減少させ,意思表示率を14.4%から24.9%に増加させました。このようにマーケティングの手法を用いて,人々の行動変容を促進して社会課題を解決に貢献するソーシャルマーケティングの実効性を理論・実践両面から研究しています。
 もう一つ,組織イノベーションです。課題が多様化,複雑化し,営利,非営利,その組織形態に関わらず社会的価値の創造が必要とされている現在において,その価値を創出しうるケイパビリティについて研究しています。
 人々の願い(human value)を実現可能にするtechnologyはあっても,実行可能にする社会のしくみが整備されていなければ,真の『ソーシャルイノベーション』は起こりません。多様な専門分野を横断的に再編して新しい分野を創成する「学融合(trans disciplinary)」によって,その社会のしくみを探究し,結果を社会に還元し,結果を基に自らも実践する良循環型の研究者であり続けたい,社会課題の解決に微力ながら貢献したいと思っています。