服部 茂幸

担当科目 国際金融論、現代国際金融

研究テーマ:日本とアメリカの経済危機と経済政策

2008年の金融危機が生じた時に、アメリカを代表する経済学者とも言えるクルーグマンが過去30年間のマクロ経済学は「最高では華々しく役立たなく、最低では全く有害である」と述べたことは有名である。金融と経済の危機は同時に経済学の危機でもある。
しかし、2008年においてアメリカと世界が経験したことは、1990年代以降の日本が経験したことも繰り返しである。私は『金融政策の誤算』、『日本の失敗を後追いするアメリカ』、『危機・不安定性・資本主義』などの著作によって、日本の失敗を再考することを通じて、現在の経済学とそれに基づく政策の問題点を明らかにした。今では金融政策に思ったほどの効果がなかったことはバーナンキも認めるところである。
けれども、その後、バーナンキは積極的な金融緩和によって、デフレを防ぎ、アメリカと世界の経済崩壊を防いだという新しい「神話」が作られた。だから、日本もアメリカに倣って、金融緩和を行えば、デフレを脱却させれば、経済が回復するはずだという主張が通り、アベノミクスの第一の矢が放たれた。
日銀の異次元緩和の実施からすでに6年がすぎているが、デフレ脱却の見通しはたたない。異次元緩和を支持するリフレ派は、異次元緩和とインフレ目標によって予想インフレ率を高めると主張していた。ところが、主張とは反対に予想インフレ率はむしろ低下している。ここでも理論の主張と現実は反対である。加えて、こうした状況ではさらにマネタリーベースを大量供給すべきということになろう。ところが、実際にはマネタリーベースの供給ペースは鈍ってきている。日銀が国債を買いたくても売り手を見つけることができなくなっているのである。インフレ目標の達成時期の公表も取りやめた。これは日銀の事実上の敗北宣言と言えるだろう。
日本の金融政策は様々なところで行き詰っている。現在、こうした経済と政策の行き詰まりの原因を明らかにし、新しい思考を打ち立てることが求められているのである。