久納 誠矢
- 担当科目
- アカデミック・リテラシーⅠ、基本統計学、ファイナンス論、企業金融論
研究テーマ:証券の自動取引とそれに伴う市場の制度設計
年金基金や保険会社,ヘッジファンドのような機関投資家は投資の目的の差はあるものの,一般にかなりの規模の証券を取引するため,トレーディングを行う際にブローカーに支払う手数料のような明示的な取引コストの他に,価格が不利な方向に動いてしまう暗黙的なコストにも注意を払う必要があります。この暗黙的なコストとは,例えばスーパーで,ある商品を大量に購入することで品切れを起こしたら,その商品の価格が徐々に上がってしまい,当初考えていた価格より高くなってしまうようなことです。購入計画においてどの程度価格が上昇してしまうのかは,売り手の仕入れ状況や,もし在庫が存在するのであればその売り手がどれだけそれを売りたいのかにもよります。株式の流通市場における購入であれば,そのようなコストを下げるためには一括で大量の購入注文を出すのではなく,時間をおきながら小出しに購入にすることにより価格の上昇を抑えつつ購入していくことになります。また,複数の取引の場において同一銘柄の取引ができるのであれば,一つの取引の場で大量の購入をするのではなく,取引の場をも分散して購入すれば,この暗黙的なコストを抑えることができます。同様の例を用いると一つのスーパーで品切れ・品薄による価格の上昇を許容して買うのではなく,複数のスーパーでその商品が売っているのであれば,複数のスーパーで買えばよいことになります。このようなトレーディングにおける暗黙的なコスト(マーケット・インパクトリスク)のマネジメントやトレーディング戦略についての研究を主におこなっています。 また,この大量の取引による価格の上昇や下落を逆手に取れば,市場の価格を意図的に動かし(操縦して),利益を出すことも不可能ではありません。一般にこのような行動は取引所において明確に禁止されており,当局において監視されていますが,近年では取引の大半が自動化されおり,多様な取引の場における幅広い市場参加者が情報通信技術を駆使して取引が行われています。この環境下において,大量取引により意図せずに(無意識に)取引のアルゴリズムが不正取引をおこなってしまう危険性も有しています。このように,意図しない不正が行われないような証券のトレーディング戦略の構築,証券市場の規制や制度等に関する研究も行っております。
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