服部 茂幸
- 担当科目
- 国際金融論、現代国際金融
研究テーマ:日本とアメリカの経済危機と経済政策
2008年の金融危機が生じた時に、アメリカを代表する経済学者とも言えるクルーグマンが過去30年間のマクロ経済学は「最高では華々しく役立たなく、最低では全く有害である」と述べたことは有名である。金融と経済の危機は同時に経済学の危機でもあった。
しかし、2008年においてアメリカと世界が経験したことは、1990年代以降の日本が経験したことも繰り返しである。私は『金融政策の誤算』、『日本の失敗を後追いするアメリカ』、『危機・不安定性・資本主義』などの著作によって、日本の失敗を再考することを通じて、現在の経済学とそれに基づく政策の問題点を明らかにした。今では金融政策に思ったほどの効果がなかったことはバーナンキも認めるところである。
けれども、その後、バーナンキは積極的な金融緩和によって、デフレを防ぎ、アメリカと世界の経済崩壊を防いだという新しい「神話」が作られた。だから、日本もアメリカに倣って、金融緩和を行えば、デフレを脱却させれば、経済が回復するはずだという主張が通った。2013年に成立した黒田日銀はこうした主張にしたがって、金融政策を行った。
ところが、黒田日銀はデフレ脱却をはたすことなく、今年4月に終わる。ところが、2021年以降、世界的なエネルギーと食料の高騰と、円安によって輸入物価が高騰し、消費者物価上昇率は一時期は4%を超えた。黒田日銀にはデフレ脱却を達成する力はないが、輸入物価が高騰すれば、消費者物価は簡単に上昇するということは、リフレの主張が二重に間違っているということである。しかも、輸入インフレは国民の経済を悪化させているということで、「悪い円安」は昨年の流行語の1つとなっていた。 こうした経済と政策の行き詰まりの原因を明らかにするとともに、誤った経済学を正すことが今、求められているのである。
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