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中村 文亮

担当科目
 経営学、経営戦略論

研究テーマ:M&Aを中心とした経営戦略とイノベーション

 私は経営戦略とイノベーションの分野において、企業の重要な意思決定であるM&A(Mergers and acquisitions; 合併と買収)に軸足を置いて研究をしています。M&Aという企業変革の局面を分析することで、人や組織の奥深さが垣間見えると考えています。具体的には、「自社の組織再編経験がM&A後の組織統合どのように影響するのか?」や「M&A後の発明者のイノベーション活動を高めるためにはどうすればよいのか?」など、組織のマクロ・ミクロ双方の観点から調査しています。
 昨今、M&Aは企業が飛躍的に成長するために欠かせない手段と考えられています。M&Aを通じて、生産効率の向上、企業は新市場への参入、さらには他社からの知識獲得などを実現することができます。実際、日本企業が関与するM&Aの件数や規模は拡大を続けており、M&Aの活用が成長戦略の一環として多くの企業の中期経営計画に頻繁に盛り込まれています。
 このように、M&Aは定番の戦略ツールとして定着しつつありますが、失敗のリスクも伴う諸刃の剣であることはあまり知られていません。企業は限られた情報の中から適切なターゲット企業を選定しなければならず、事前にその全てを把握することは不可能です。契約後に蓋を開けてみると、期待していた資源や人材が存在しないことも珍しくありません。契約時には通常、その企業の株価に30〜40%上乗せした買収価格を支払う必要があり、その額はときに数千億円から兆円単位に達します。さらに取引後は、組織全体を円滑に機能させるため、買収企業とターゲット企業の組織構造、システム、組織文化を変革する必要があります。しかし、この組織変革は従業員の感情や組織アイデンティティに深く関わるため、極めて繊細かつ困難であり、計画通りに進むとは限りません。こうしたM&Aの事前段階から完了後に至る長いプロセスを的確に管理してこそ、投資した金銭的コストを上回る価値を創出できるのです。
 M&Aのプロセスは、戦略や財務といった経営的側面にとどまらず、組織文化、アイデンティティ、公正性といった社会文化的側面とも深く関わります。私は、M&Aを成功に導くマネジメントの解明にとどまらず、この現象を通じて、人や組織が持つ変革力、融和力、協働力といった動的な側面を明らかにしたいと考えています。

 

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